
PERT図(パート図)は、アクティビティをノード、依存関係を矢印で表し、各アクティビティに 3 つの見積りから求めた期待所要期間 te = (o + 4m + p) / 6 を載せたネットワーク図です。米海軍特別プロジェクト局が 1958 年、ポラリス・ミサイル計画のために Program Evaluation and Review Technique として発表しました。本記事では、7 つのアクティビティからなるオフィス改装を 29 営業日と計算します。
PERT図とは
PERT図とは、プロジェクトのすべてのアクティビティ、その依存関係、期待所要期間を 1 枚の図で結ぶネットワーク図です。図からは、プロジェクトの終了日を決めるアクティビティの連なりであるクリティカルパスと、ほかのアクティビティの余裕時間(フロート)を読み取れます。
PERT は Program Evaluation and Review Technique の略です。米海軍特別プロジェクト局が Booz Allen Hamilton および Lockheed とともにポラリス計画のために開発し、1958 年に発表しました(出典:Wikipedia, Program evaluation and review technique、Mosaic Projects, White Paper WP1087)。ほぼ同時期に、DuPont がクリティカルパス法 (CPM)を開発しました。違いは、CPM がアクティビティごとに 1 つの固定所要期間で計算するのに対し、PERT は 3 つの見積りで計算し、不確実性を扱う点です。
PERT図は何に役立つか
- 網羅性: ネットワークを描くと、プロジェクト全体を考え抜くことになり、抜けているアクティビティに気づきます。
- 順序: どのアクティビティがどれを待つのかが見えます。
- ボトルネック: クリティカルパスが、重点的に監視すべきアクティビティを示します。
- 納期リスク: 見積りのばらつきから、期日を守れる確率を計算できます。
- コミュニケーション: ステークホルダーは、プロジェクトがなぜその期間かかるのかを 1 ページで把握できます。
ヒント: Merlin Project ラーニングパスでは、従来型、アジャイル、クリエイティブなプロジェクト管理を順を追って解説しています。
PERT の所要期間はどう計算するか
PERT の所要期間は、3 つの見積りの加重平均 te = (o + 4m + p) / 6 です。最頻値を 4 倍、両端の値を 1 倍ずつ数えます。標準偏差 σ = (p − o) / 6 は、実際の所要期間が te の周りでどれだけばらつくかを表します。
PERT 見積りの 3 つの値の意味は次のとおりです。
- 楽観値 (o): すべてが順調に進んだ場合の所要期間。
- 最頻値 (m): 通常の条件での所要期間。
- 悲観値 (p): 予見できる障害が起きた場合の所要期間。
te = (o + 4m + p) / 6σ = (p − o) / 6
1 つのアクティビティの計算例: 試作品の製作に、楽観値 5 日、最頻値 8 日、悲観値 14 日かかるとします。
te = (5 + 4 × 8 + 14) / 6 = 51 / 6 = 8.5 日σ = (14 − 5) / 6 = 1.5 日
つまり、最頻値の 8 日ではなく 8.5 日を計画に入れます。半日の上乗せは見積りの非対称から生じます。悲観値は m より 6 日長く、楽観値は 3 日短いだけです。
PERT図の例:クリティカルパスを含むネットワークはどうなるか
PERT のネットワークは、すべてのアクティビティの期待所要期間を依存関係でつなぎ、全体の期日を導きます。例として、オフィスを改装して入居するプロジェクトを取り上げます。7 つのアクティビティについてそれぞれ 3 つの見積り(営業日)を置き、すべての値を Python で検算しました。
| アクティビティ | 先行 | o | m | p | te | σ | 最早開始 | 最遅開始 | 余裕 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 現況調査と計画 | なし | 3 | 5 | 13 | 6.0 | 1.67 | 0 | 0 | 0 |
| B 家具とネットワーク機器の発注 | A | 10 | 15 | 26 | 16.0 | 2.67 | 6 | 7 | 1 |
| C 間仕切り壁の解体 | A | 2 | 3 | 4 | 3.0 | 0.33 | 6 | 6 | 0 |
| D 電気工事とネットワーク配線 | C | 4 | 6 | 14 | 7.0 | 1.67 | 9 | 9 | 0 |
| E 塗装と床工事 | D | 5 | 7 | 9 | 7.0 | 0.67 | 16 | 16 | 0 |
| F 家具と機器の組立 | B, E | 2 | 4 | 6 | 4.0 | 0.67 | 23 | 23 | 0 |
| G 移転と検収 | F | 1 | 2 | 3 | 2.0 | 0.33 | 27 | 27 | 0 |
PERT図:7 つのアクティビティによるオフィス改装
期待所要期間 te(営業日)、プロジェクト 0 日目から数えた最早開始と最早終了
独自の計算例。すべての値は te = (o + 4m + p) / 6 で計算。
結果の読み方:
- フォワード計算: 各アクティビティは、最後の先行アクティビティが終わった時点で開始します。F は B(22 日目に終了)と E(23 日目に終了)を待つため、23 日目に開始します。
- プロジェクト期間: G は 29 日目に終了します。期待所要期間は 29 営業日です。
- クリティカルパス: A、C、D、E、F、G の連なりには余裕がありません。このいずれかが 1 日遅れると、移転も 1 日遅れます。
- 余裕: 発注 (B) は、終了日を動かさずに 1 日遅く始めるか、1 日長くかかってもかまいません。
期日を守れる確率はどれくらいか
PERT はクリティカルなアクティビティの分散 (σ²) を合計します:2.78 + 0.11 + 2.78 + 0.44 + 0.44 + 0.11 = 6.67。その平方根から、プロジェクトの σ = 2.58 営業日が得られます。PERT の正規分布の仮定に従うと次のようになります。
| 約束する期日 | z 値 | 確率 |
|---|---|---|
| 29 営業日 | 0.00 | 50.0 % |
| 31 営業日 | 0.77 | 78.1 % |
| 32 営業日 | 1.16 | 87.7 % |
顧客に 29 日と約束すると、守れる確率はコイン投げと同じです。32 日のほうが確かな約束になります。
同じ例が手法の限界も示します。 PERT はクリティカルパスだけを見ます。しかし発注 (B) を通る経路は 1 日短いだけで、ばらつきは大きくなります(σ = 3.23 日)。この経路だけで 29 日を超える確率は 37.8 % です。したがって 29 日で 50 % という値は楽観的すぎます。プロジェクト管理におけるモンテカルロ・シミュレーションは、すべての経路を同時に計算してこの差を埋めます。
PERT図の書き方:手順
PERT図は 7 つの手順で作ります。アクティビティの洗い出し、依存関係の定義、3 つの所要期間の見積り、ネットワークの作図、フォワード計算とバックワード計算、クリティカルパスの特定、そして継続的な更新です。

- すべてのアクティビティを洗い出す: WBS(作業分解構成図)からアクティビティを導きます。初期段階ではマインドマップが役立ちます。
- 依存関係を定義する: 各アクティビティについて、先に終わっている必要があるアクティビティを決めます。互いに依存しないアクティビティは並行して進みます。
- 所要期間を見積る: o、m、p を記録して te を計算します。信頼できる実績値があれば、1 点の見積りで足ります。
- 図を描く: アクティビティをノード、依存関係を矢印で描きます。後続アクティビティは先行アクティビティの右側に置きます。
- フォワード計算とバックワード計算: フォワード計算で最早開始と最早終了を、バックワード計算で最遅開始と最遅終了を求めます。
- クリティカルパスと余裕を求める: 余裕 = 最遅開始 − 最早開始。余裕が 0 のアクティビティがクリティカルパスを形成します。
- 見直しと更新: 実績の所要期間を入力し、大きな変更のたびにクリティカルパスを再計算します。
Merlin Project で PERT図を作るには
Merlin Project では、作業分割から PERT図を作ります。アクティビティを作成し、所要期間を入力し、依存関係を設定してから、表示の種類 ネットプラン でプロジェクト表示 PERT を開きます。カードには最早・最遅の開始と終了、期待される所要期間、余裕時間が表示されます。
1. アクティビティと見積りを入力する
表示 > 作業分割 を開き、挿入 > アクティビティ(Cmd+N)で 7 つのアクティビティを追加します。Merlin Project は三点見積りを自動では計算しません。o、m、p それぞれに独自のフィールドを作成します。挿入 > 列 を選び、新規フィールドに関して でフィールド名「楽観値」を入力し、インスペクタで 種類 を 所要期間 にします。「最頻値」と「悲観値」も同様に作成します。これで見積りがアクティビティに記録されます。インスペクタの 計画 タブにある 所要期間 に te を入力します。例えば発注なら 16 日です。

2. 依存関係を設定する
先行と後続のアクティビティを選択し、構造 > リンク > 終了 - 開始(Ctrl+Cmd+L)を選びます。インスペクタの 依存関係 タブで先行アクティビティの # 番号を入力する方法もあります。詳しくはレッスン「コンテキストとロジックの追加」を参照してください。

3. クリティカルパスを表示する
表示 > クリティカルパスを表示 で、ガントチャート上のクリティカルパスが赤く強調されます。列 期待される余裕期間の合計 には各アクティビティの余裕が表示されます。例では B が 1 日です。

4. PERT 表示を開く
Cmd+2 で ネットプラン に切り替え、プロジェクト表示 PERT を選びます。表示オプション クリティカルパス で、ここでもパスを強調できます。ネットプランと PERT図は Merlin Project の機能で、Merlin Project Express には含まれません。

PERT図の長所と短所
PERT図は不確実性とボトルネックを見える化しますが、手間がかかります。アクティビティごとに 3 つの見積りと正確な依存関係が必要です。少数のよく知られたアクティビティだけなら、手間に見合うことはまれです。
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 作成の過程でプロジェクト全体を考え抜くため、未解決の点が見えてきます。 | 作成に手間がかかります。アクティビティごとに 3 つの見積りが必要です。 |
| すべてのアクティビティと依存関係を一目で把握できます。 | 読み手には、ノード、矢印、余裕についての短い説明が必要です。 |
| クリティカルパスと余裕を直接読み取れます。 | ネットワークが細かいほど、保守の手間が増えます。 |
| ばらつき σ で納期リスクを数値化できます。 | PERT はクリティカルパスだけを見るため、並行する経路を過小評価します。 |
| ソフトウェアが変更を即座に再計算します。 | 小規模なプロジェクトには過剰です。 |
ヒント: PERT のようなネットワーク手法は、依存関係の多い大規模プロジェクトで効果を発揮します。短いプロジェクトなら、ガントチャートやかんばんボードで足りることがよくあります。
PERT、ガント、かんばんの使い分け
PERT は依存関係が多く不確実なプロジェクトの計画に、ガントはタイムライン上の日程管理に、かんばんは日々の作業の流れに向いています。実務では多くのチームが表示を組み合わせます。
PERT とガント
- ガントチャート: アクティビティをタイムライン上のバーで表示します。日程、リソース、進捗の管理に向いています。
- PERT図: 依存関係の論理と所要期間の不確実性を示します。開始前に確かな期日を見つけるのに向いています。
PERT とかんばん
- かんばん: 作業の流れを管理し、仕掛り作業を制限します。アジャイルやリーンの現場でよく使われます。
- PERT図: クリティカルパスを持つ固定の順序を計画します。多くのアクティビティが絡み合う場合によく使われます。
PERT とスクラム
- スクラム: 要件が変わるプロジェクト向けの反復的なスプリントです。
- PERT図: 期日と依存関係が重要な従来型またはハイブリッド型のプロジェクト向けです。
メモ: Merlin Project では、同じアクティビティがガントチャートではバー、PERT のネットワークではカード、かんばんボードではカードとして表示されます。データの入力は 1 回で済みます。
実践のヒント
- 見積りは個別に聞く: o、m、p は実際に作業する人に見積ってもらい、悲観値を明示的に尋ねます。
- 粗い計画から詳細へ: ワークパッケージのレベルから始め、クリティカルパス上またはその近くのアクティビティだけを細かくします。
- 準クリティカルな経路を監視する: 例では B の余裕は 1 日だけです。こうしたアクティビティは、クリティカルパスと同じ監視リストに入れます。
- 期日は確率とともに約束する: 1 つの日付ではなく、例えば 29 〜 32 営業日のように幅で伝えます。
- 定期的に更新する: PERT図は、実績の所要期間が入力されている間だけ有効です。
まとめ
PERT図は、ネットワーク図と三点見積りを組み合わせたものです。期待されるプロジェクト期間、クリティカルパス、約束する期日の確率という 3 つの結果が得られます。例では 29 営業日、A、C、D、E、F、G の連なり、そして 32 日で 87.7 % です。並行する不確実な経路が多い場合は、モンテカルロ・シミュレーションで計算を補います。
このブログ記事についてご質問やご意見がございましたら、ぜひフォーラムへのご投稿をお待ちしております。
よくある質問
PERT の計算式は?
期待所要期間は te = (o + 4m + p) / 6 で計算します。o は楽観値、m は最頻値、p は悲観値です。標準偏差は σ = (p − o) / 6 です。例:5 日、8 日、14 日なら te = 8.5 日、σ = 1.5 日になります。
PERT と CPM の違いは?
どちらもネットワーク図とクリティカルパスを使います。クリティカルパス法 (CPM) はアクティビティごとに 1 つの固定所要期間で計算します。PERT は 3 つの見積りで計算し、期日を守れる確率を導くためのばらつきも求めます。
PERT図とガントチャートの違いは?
PERT図は論理を示します。どのアクティビティが互いに依存し、所要期間がどれだけ不確実で、どの経路がクリティカルかがわかります。ガントチャートは同じアクティビティをタイムライン上のバーで示し、日程と進捗の管理に向いています。
期日を守れる確率はどう計算しますか?
クリティカルパス上のすべてのアクティビティの分散 σ² を合計し、平方根を取ります。約束する期日と期待所要期間の差をこの σ で割り、正規分布で z 値を確認します。例では、期待値 29 日、σ = 2.58 のとき、32 日の確率は 87.7 % です。
PERT図を作れるツールは? Merlin Project で作れますか?
はい。Merlin Project では、表示の種類ネットプラン (Cmd+2) でプロジェクト表示 PERT を選びます。各カードに最早・最遅の開始と終了、期待される所要期間、余裕時間が表示されます。3 つの見積りは、種類が所要期間の独自フィールドに記録します。ネットプランと PERT は Merlin Project に含まれ、Merlin Project Express には含まれません。